欲しい本はむこうからやって来る

book-1739126_640渋谷の宮益坂にある中村書店の御主人は、本が好きという事だけで詩集専門の古本屋をひらいた一匹狼でした。古い詩集や小説などを、探していた私のために、幾冊もの戦前の本をあつめてくれました。神田あたりで買うよりずっと安い値段。彼は、古書が無闇(むやみ)に値をつり上げられ、投機の対象にさえなるのを憂い、適正な値段をどの本にもつけていたのでした。私の本キチをいましめて、「本当に欲しい本はね、あわてなくてもむこうからやって来るものですよ」とさとすようにいわれたこともあります。(後略)

私の部屋のポプリ
熊井明子(くまい あきこ):著
河出書房新社 2006年
30ページ ”「本仙人」と〈わすれなぐさ〉” より

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