自分でも気づかないうちに、一滴一滴、コップに水がたまっていたのだ

お茶を続けているうち、そんな瞬間が、定期預金の満期のように時々やってきた。何か特別なことをしたわけではない。どこにでもある二十代の人生を生き、平凡に三十代を生き、四十代を暮らしてきた。
その間に、自分でも気づかないうちに、一滴一滴、コップに水がたまっていたのだ。コップがいっぱいになるまでは、なんの変化も起こらない。やがていっぱいになって、表面張力で盛り上がった水面に、ある日ある時、均衡をやぶる一滴が落ちる。そのとたん、一気に水がコップの縁を流れ落ちたのだ。

『日日是好日(にちにちこれこうじつ) 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』
森下典子(もりした のりこ):著 飛鳥新社 2002年
6〜7ページより

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