涙ぐみたいほどの気持ちで、いつも自分は欲している人間だった

「先生は私を見ている」
キリコには確信があった。居並ぶ生徒の中で、自分こそがいちばん輝いた表情をしているはずである。なぜなら、キリコは誰よりも欲しているからだ。それがなになのか見極めることができないまま、涙ぐみたいほどの気持ちで、いつも自分は欲している人間だった。それが他人にわからぬはずはない。ましてや、服部ほどの鋭いクリエイターだったら、自分の視線や身のこなしから、必ずやすべてを感じとってくれるはずである。

『星に願いを』 林 真理子 :著
講談社文庫 1986年
228ページより

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