もう努力しない。無理しない。

もう努力しない。無理しない。気合入れない。
楽しいことだけやって生きる。それでもいいでしょう? こんなにがんばってきたのだから、とわたしは自分に問いかける。
もう傷つきたくないんです。子どもの頃からたっぷり傷ついてきたのだもの。これ以上、お尻を叩いて生きたくない。うんと愛して甘やかして、飴玉のようにまるく優しく、自分を撫でて生きたいの。
そう思ったとき、かつて感じたことのない解放感が訪れた。細胞と細胞の間が開いて、まっすぐ風が吹き通る。深い呼吸ができるようになった。そしてどれほど長い間、息を詰めて生きてきたか、いまさらながらに知ったのである。

『実りの庭』 光野桃(みつの もも):著 文藝春秋 
2011年 188ページより

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