シェイマス・ヒーニー 「ダブルテイク」

人間は悩み苦しんでいる
互いに責め苦を負わせ 傷つき、かたくなになっている
どんな詩も劇も歌も 完全に正せはしない
人が負い、耐える不正を

監獄にいる無実の罪人たちは いっせいに鉄格子をたたく
ハンガーストライカーの父親は
墓場のように押し黙って立ちすくむ
ベールをかぶった未亡人は 葬儀場で気を失う

歴史がつぶやく、希望なんか捨てちまえ
墓のこちら側じゃ何の役にも立たん
だが、人生にはたった一度だけ
待ちわびた潮が満ちるときがある
正義が立ち上がることがある
そのときこそ希望と歴史が韻を踏む

そうだ。大いなる変貌を期待せよ
復讐の向こう岸に 彼方の岸辺に
ここからたどり着けると信じよ
奇跡を信じよ
そのときこそ救いと癒しがわきあがる

奇跡を、自然治癒を呼び寄せよ
すなわち完全に自己を表出し
わが感情をはたと見直す(ダブルテイク)のだ
もし山に火事あれば
あるいは稲妻や嵐かもしれぬ
そのときこそ神が天から語りかける

それは誰かが
月満ちて新しい命の誕生の
悲鳴と産声を聞くということだ

シェイマス・ヒーニー「ダブルテイク」

『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』
(原題 "GETTING TO MAYBE: How the World is Changed")
フランシス・ウェストリー( Frances Westley ),ブレンダ・ツィンマーマン( Brenda Zimmerman ),マイケル・クイン・パットン( Michael Quinn Patton ):著
東出顕子(ひがしで あきこ):訳
英治(えいじ)出版 2008年 216ページより

広告