自分が信じた道をひたむきに進もうとした画家

ルソーは四十の手習いで本格的に絵を始めた。そのまま税関に勤めていれば、平穏なリタイアが待っていただろうに。
下手だクズだと嘲笑されながら、あえて険しい道を選んだ男。貧しさゆえにボンボン売りをしてまで、自分が信じた道をひたむきに進もうとした画家。
そんなルソーが、おそらくは生涯の最後に精魂傾けて描き上げた作品――「夢をみた」。
その作品が、オークションハウスの駆け引きの場に引きずり出され、何百万ドルもの大金で取引されるのか。そしてその金で、おれは高級アパートを買うっていうのか?
ティムはもうひとつ、大きなため息をついた。

『楽園のカンヴァス』 原田マハ:著 
新潮社 2012年 143ページより

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